もしも君が助けてくれたら
[side 輝]

帰る時も窓の外だけをみて俺の顔もみない。

校舎を案内するときも、どこか思い詰めたような顔。

めんどくさいのか。

そう思ったけれど、めんどくさい顔とは少し違って見えた。

じゃぁ、何だろう。

こんな風な女子は初めてだった。

「変な奴・・・」

正直にそう思った。

すごく、変な奴。

でも、皆からはどこか好かれているようにみえた。

ふっと外をみると、大きな木に駆け寄っていく。

サッカー部や野球部の間を通り抜けて走っていく。

そして、大きな木の下にたどり着くと、大きく手を広げた。

何かいるのだろうか・・・。

目を眇めてみてみた。

元から視力はいいほうではない。

遠くのものをみるときはよくこうしている。

「・・・・猫?」

大きく広げた手の中に収まったのは、まるまるの猫。

たぶん、白と黒の斑模様だった。

急な用事というものは、猫を助けることだったのか。

本当に、変な奴だ。
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