もしも君が助けてくれたら

「柊ー」

先生に呼ばれた私は慌てて外から目を反らし、先生のところに急ぎ足で行った。

「これ、学級名簿。曉が新しく来たから新しく書き換えてくれるか?」

「え、あ、はぁ・・・」

先生は学級名簿を強引に私に渡すと、スタスタと教室から出ていってしまった。

まったく、めんどくさいことは人に押しつけるんだから。

それでも愛嬌のいいあの笑顔で見られると断れないのは先生が一番分かっているんだろう。

いっつもあの笑顔だ。

私は自分の席に戻り、朝自習の間ずっと学級名簿を書いていた。

が。

・・・曉ってどうやって書くんだっけ。

そう。

曉の漢字を思い出せずに困っていた。

他の人の漢字は書けてるから後は曉君のだけなんだけどなぁ・・・・。

チラッと横をみてみても、名札は微妙に見えない位置にあるし、机の名札は絶対に見えない。

私は小さなため息をもらし、シャーペンをクルクルと手の上で回した。

そういえば、最近ため息多くなったな・・・。

体もダルいし、やる気もおきない。

ほんと、ダメだわ、自分。

そう思ってると、トントン、と肩を叩かれた。

横を見ると、曉君が手を差し出してきた。

何を差し上げればいいのか首を傾げていると、曉君が名簿を指さした。

私が名簿を渡すと、自分の欄に丁寧な文字で曉輝、と書いた。

私が困っていたことに気がついたんだ。

純粋に、優しいところもあるんだな、そう思った。
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