もしも君が助けてくれたら
[side 輝]

「なっ!曉!俺らと一緒に飯くわねぇか?」

涙ほくろが印象的な男子が俺に話しかけてきた。

確か、高田秀・・・だったような・・・。

「な、行こうぜ!おまえ一人で飯食っててもつまんねぇだろ?」

半ば強引に連れて行かれるように屋上に上ってくると、屋上には植野光輝、東龍がいた。

その二人の名前を覚えている自分の記憶力に驚きつつも、俺は高田の隣に座った。

すると、植野と東がニカッと笑い、順番に自己紹介をしてきた。

「俺、植野光輝な。これでも野球部エース。今はカーブ練習してんだわ。彼女なしで好きな奴なしで部活一筋。そういうのカッケェやろ?」

少し色黒の植野は”なまり”があった。

けど、悪そうな奴には見えなかった。

「俺は東龍。おまえのクラスのさ、近藤奈々の彼氏な」

よろしく、と差し出された手を俺は握り返した。

そして、さっきまで隣にいたはずの高田の姿がないことが分かった。

「高田は?」

俺が二人に訪ねると、二人は同時に後ろを振り返った。

二人の後ろにはフェンスごしに何かを眺めながらパンを食べている高田の姿があった。

「恋わずらい」

ニヒッと笑って言った植野の言葉に東もニヤッと笑った。

「だな。アイツいっつも見てるもんな」

「あそこまでくれば重傷やで?」

「かなりのな。でも相手は高田のことなぁんも想ってないから悲しいよなぁ・・・」

「それでも好きでいる・・・、俺には絶対無理やな」

二人でうんうんとうなずいているのをぼんやりと眺めていた俺に二人が詰め寄ってきた。

「で?で?」

「曉には気になる奴とかいる?」

前の学校ではこういう風に急接近の親友関係をあまり持っていなかったから俺は少し戸惑いながらも首を傾げた。

「いや、いない、けど。変な奴だと思った奴なら・・・」

「誰や誰や!」

「可愛い?」

可愛いのだろうか・・・。

どちらかというと・・・。

「綺麗な人だとは思った」

うん。

多分そんな感じだ。

すると二人がにやぁ、と笑った。
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