もしも君が助けてくれたら
次の日、転入生話は最高潮に達していた。

「ねぇねぇ。奈々ちゃん。私、転入生の話朝から聞いてるんだよ?耳にたこが出きるくらい!」

転入生の話しかしない奈々ちゃんに私はそう言った。

すると、奈々ちゃんがフッと鼻で笑った。

「わかってないわね、由良は。これはチャンスなのよ!彼氏のいるあたしには無理だけど、彼氏のいない由良にはチャンスなのよ!」

そう言われても、彼氏はいらないし・・・。

私が頬をポリポリと掻くと、奈々ちゃんがあっけらかんとした声を出した。

「由良、本当に転入生に興味がないの!?」

「興味があるかないかって言われればあるけど、でも彼氏はいらないなぁ・・・」

ふっと外を見ると、朝の遅い人たちが正門から学校に入ってきている。

悪ふざけをしながら入ってくる人、大人しく礼儀正しく入ってくる人、本を読みながら入ってくる人、いろいろだ。

そうやって惚けていると、奈々ちゃんが呆れたように言った。

「由良。そんなんじゃ一生彼氏できないよ?由良はモテるけど由良自身が恋愛に興味ないって知ってるから諦める人が多いんだよ?」

・・・ふーん。

興味がないものはないんだから仕方ないと思うんだけど、恋愛は興味がないといけないらしい。

「そうなんだー・・・。そうか、そうかぁ・・・」

彼氏、ねぇ・・・・。

すると、チャイムがなった。

皆が慌ただしく席に着き始める。

「いい?由良。これはチャンスなのよ!チャンス!!」

ビシッと指を指された私は奈々ちゃんに小さく笑い返した。

そして、クラスの皆の浮き足がたつ。

転入生がこのクラスかどうか。

・・・年上かもしれないのに。

そんなことを考えながら外を眺めていると、ふわっと優しい風が私の前髪を撫でた。
< 4 / 44 >

この作品をシェア

pagetop