嘘つき彼氏
『あ、ありがとうございました。』
あ…。
今やっとちゃんと顔を見たけど、ほんとにカッコいい人。
透き通る肌にきれいな二重にキリッとした目。
モデルさんかと思うほど。
『いや、俺のせいだから…。ごめんな。』
そう言って申し訳なさそうに、悲しそうな顔をして彼は謝る。
“俺のせい”?
まさか、この人が…
『あなたが…、倖田志紀先輩ですか…?』
『ああ』
そっか。
やっと会えたよ。この人が倖田志紀先輩か。
“あなたのせいで!”って怒りたいのに怒れない。
きっかけはどうあれ私を助けてくれた、優しい人だから。
『……。…あ!』
『ん?どうした?』
大事な事を忘れてた。
『私たち付き合ってませんよね?』
『うん。…あの噂か』
『はい…』
『アレ、俺が流した』
え…?
ニヤリと笑いながら言う。それもなんだか様になってる。
『どうしてそんな嘘を…』
今の今まで顔も知らなかった人。
学年も違うし、顔をあわせることなんてなかった。
そんな人がどうして…。
『こうでもしなきゃ、お前、俺を見てくんねぇだろ?』
『……?』
先輩の言っていることが理解できずに首をかしげる。
すると先輩は、「あぁ〜!」と照れたように髪を掻きながら、
『…お前が好きだから』
そう言った。