週末の薬指
ぐずぐず考えていると、やたら明るい弥生ちゃんの声が響いた。

「私、パスタランチ。ホットミルクティーで。夏弥さんは?」

「あー、花緒は何食べてるんだ?」

「私?和風パスタ。きのこがおいしいよ」

夏弥は私の食べかけのお皿を見ると、私が手にしていたフォークをすっと取った。

そして、私のパスタを一口食べると。

「うまいな。じゃ、俺もこれにする。ホットコーヒーで」

手にしていた私のフォークをお皿の上に置くと、私の耳元に口を寄せて

「花緒の作るパスタの方がうまいな」

にやりと笑ってそう言った。

「あ、……そんなこと、ないけど……ありがとう」

夏弥が囁く言葉の甘さと、あまりにも近い距離に照れて、俯いてしまう。

目の前の弥生ちゃんとシュンペーがどんな顔で私を見てるのか、すごく気になるけど、恥ずかしくて見る事ができない。

膝の上に置いた手を見ながらどうしようどうしよう思っていると、夏弥の手が重ねられた。

軽く握られたその手に驚いて夏弥を見ると、くすりと笑って頷いている。

「えっと……」

何をどう言えばいいんだろう。

きっと、弥生ちゃんもシュンペーも、気づいてるはずだし、と思って。

恐る恐る視線を前に向けると、大きくため息をついて、まさに『呆れてる』という顔をした二人がいた。

夏弥さんと私を交互に見遣りながら、何か言いたそうにしているけれど、結局何も言わずに呆れてるだけ。
< 105 / 226 >

この作品をシェア

pagetop