週末の薬指
「推理って……。あー、あの日、見られてたんですか。しまったなー」

頭を抱えるシュンペーに、弥生ちゃんはいたずらっ子のような顔をした。

「大丈夫だよ、誰にも言ってないし、安心して」

「あ、それはどうも。……ちなみに今8週目だそうです」

「そうなんだ。安定期まで心配だね。ちゃんと気をつかってあげなよ」

「はい……。そりゃもう、かなり気つかってますよ。抱きたくても我慢してるし……いや、これはいいんですけど。ははは」

思わず真っ赤になったその顔に、私も弥生ちゃんもぷっと笑ってしまう。

抱きたいのを我慢するなんて、本当彼女とお腹の中の赤ちゃんを大切にしてるんだな。

それに、一緒に産婦人科に行くなんて、優しいなあ。

いつも『後輩』だっていう目で見てるけど、いざとなったら頼れるいい男なのかもしれない。

そっと夏弥を見ると、夏弥も私を見ていた。きっと、二人が今考えてるのは同じだと思う。

『いつかは、私たちも』

視線でそう言葉を交わせる幸せ。

そして、私の手を握る夏弥の手に力が入ってさらに幸せを感じる。

そんな私たちに気づいても、無視するように、弥生ちゃんの言葉は続いた。

「で、いつ結婚するの?赤ちゃんいるし、まずは入籍?」

それは、私も聞きたい。

かわいい後輩の門出だし、ちゃんとお祝いしてあげたいし、現実的に言えば、新婚旅行にも行くだろうし仕事の段取りも考えなきゃいけない。

「仕事は何とかなるから、結婚式の日程は彼女の体調とか優先していいよ。二人の都合のいい日にしてくれていいからね」
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