週末の薬指
3
「花緒、今日は家に帰るんだよな?」
隣の夏弥が、私の腕を掴んで歩き出す。裏手にある公園にでも行くのかと、素直についていった。
大通りを迷いなく歩く夏弥には、どこに行くのか目的地があるようで、ずんずんと歩いていく。
「えっと、今日はおばあちゃんの家に帰る。きっと私が帰っても『あら、ずっと瀬尾さんの部屋にいてもいいのに』って言われそうだけど。でも、やっぱりおばあちゃんが気になるし、帰る」
その言葉に嘘はないけれど、夏弥の部屋に持って行った着替えだけじゃやっぱり足りないし、自分の部屋に戻っていろいろと片づけたいこともあるし。
第一、結婚の許しをおばあちゃんがしてること、ちゃんと確認したい。
まあ、十中八九おばあちゃんは許してくれてるとは思うけど。
「そうか。金曜日の晩からでもまた来いよ。俺も明日から木曜まで出張だから、会えないし」
「え、出張?どこに?」
「……沖縄」