週末の薬指
戸惑う私の目の前に指輪を差し出して、私の左手を優しく取ると、希未さんの手から私の薬指に輝きが移された。

一瞬ひんやりとしたプラチナの温度にびくっとしたけれど、希未さんがはめてくれる指輪は徐々に私に馴染んでいく。

「綺麗だな。やっぱり花緒の雰囲気に似合う。さすが俺」

「ふふ。その言葉も蓮に言っておくわね。……瀬尾さん、顔が緩んでますよ」

「ま、今は何言われてもいいよ。どうせ結果は同じだ。今晩蓮からの電話で冷やかされて寝られないんだ」

「そうね、横で私も一緒に笑ってるわ、きっと」

「出たよ、バカ夫婦」

軽口を交わしあいながら笑い声をあげる二人の声が聞こえるけれど、どこか遠い所から響いてくるように思えてならない。

私はといえば、左手を目の前にかざしたままダイヤの輝きに浸っているだけ。

照明にかざすと増す輝きは、私が今まで持てなかった『愛されてる』という幸せの実感を与えてくれる。

夏弥からは何度も言葉でもらっていた気持ちが、私の指に収まって、このまま愛し続けてくれると教えてくれる。

なんて綺麗で、なんて重くて、なんて幸せなんだろう。
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