週末の薬指
「花緒……」

ただひたすら指輪を見つめていると、夏弥の腕が肩に回され引き寄せられた。

「似合ってる」

そう囁かれて、夏弥の指先が私の頬を優しく撫でてくれる。

「え……私」

夏弥の指先が、私の涙を拭ってくれたと気づいた。

「私、泣いてる……?」

はっと夏弥を見ると、私だけを見つめてくれる愛しい瞳。

ただただ私にだけ向けてくれる愛情を宿している瞳が輝いている。

私の薬指に収まっている指輪に負けないくらいに輝いている。

「ちゃんと二人で、幸せになろうな」

その言葉に、返す言葉が出なくて、私は何度も頷いた。
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