週末の薬指
朝早くから夏弥のマンションを訪ねたせいか、普段どおりに残業をしていても疲れはいつも以上に感じてしまう。

細かい数字のチェックをしていると集中力も萎えてくる。

机に突っ伏した途端に眠りにおちる自信が溢れて、数字がぼやけてきた。

だめだ。このまま続けてもミスってしまうな。

まだ提出期限まで余裕があることを確認して、今日は店じまい、帰る事にした。

「お疲れ。今日は帰るから、シュンペーもほどほどにして帰るようにね」

「今日は早いですね。何かする事あればやっておきますよ」

「いいよ、今日明日で特に急ぐものは抱えてないから。今日はたっぷり睡眠とって明日頑張るよ」

向かいの席に資料を広げてなにやらインプットをしているシュンペーは、お昼休みに弥生ちゃんから喝を入れられた後、

『お前も子供も俺のもんだ、誰にも渡さないし、一生俺が守ってやる』

早速気合いのメールを送った。送る瞬間のシュンペーは力強くて頼れる男そのもの。

もうすぐ父親になるというのは、こうも男を成長させるものなんだなと、しみじみ実感した。

何が何でも彼女と子供との幸せな未来を手に入れるという意気込みに溢れていて、ちょっと惚れそうになった。

夏弥には内緒だけど。
< 134 / 226 >

この作品をシェア

pagetop