週末の薬指
怒っているのか悲しんでいるのか不安なのか、結局自分の気持ちが整理できないまま家に帰ると、おばあちゃんから冷やかしに似た視線を投げられて居心地が悪かった。

夏弥に関する騒動を知っているはずだし、私が動揺しているだろうことも予想していたのか、普段よりも華やかな夕飯が並んでいた。

「……この、あからさまに私を気遣うようなメニューやめてよ」

小さくため息をつきながら食卓につくと、おばあちゃんは私が大好きな炊き込みご飯を目の前に置いてくれた。

「あ、ばれたかい?私の予想では、目を真っ赤にして涙も流しながら帰ってくるかと楽しみにしてたのにね。残念」

「残念?」

「そうだよ。残念。何年か前に恋人に振られた時、えっと悠介だったっけ?彼と別れた時は結構あっさりしてておばあちゃんの前では落ち着いてたからね、ちょっと物足りなかったんだよ」

くくくっと笑う声にどう答えていいのか。

愛しい孫、であるはずの私なのに、どうして失恋して泣く事を期待されなきゃいけないんだろう。

確かに悠介と別れた時にはおばあちゃんの前では泣かなかった。

おばあちゃんに心配をかけたくないという気持ちが強かったのもあるし、私自身泣けなかった。

「花緒が男と別れて泣くくらいに人生を謳歌して欲しいって思うんだけどね」

「別れて泣く事が謳歌なの?おかしいよそれ」

おばあちゃんの言葉の真意がよくわからない。

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