週末の薬指
「な、夏弥……」

突然の事にバランスが崩れた私は、夏弥の膝に座りながら思わず首にしがみついた。

私と同じ香りのボディソープの香りをほのかに感じて、それだけで気持ちが和むけれど、あまりにも近い夏弥の顔が私を俯かせてしまう。

「えっと、おばあちゃんが来たら困るし……」

少し寂しい気持ちを感じながらも、夏弥の膝から降りようとすると、途端にぎゅっと抱き寄せられた。

私の顔は夏弥のちょうど鼓動のあたり。何度か聞いた事があるその音が私の体に響き渡るようだ。

「おばあちゃんなら、明日の朝まで自分の部屋からは出ないってわざわざ言い残してったぞ。
俺がこうして花緒と触れ合いたいって気づいてたんじゃないか?」

「そ、そんな事……」

ない、とは言い切れない。

おばあちゃんの事だから、夏弥と一緒にいる私の邪魔をしないでおこうとにやにや笑ってるにちがいない。

きっと、自分の部屋で『いいことした』って満足しているはずだ。

「おばあちゃん、本当、夏弥の事が好きだね」

夏弥の胸に押し付けられたままの状態で呟くと、その胸が笑いで響くのがわかる。

私の言葉に笑っているのか、体も震えている
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