週末の薬指
聞きたい事はいっぱいあるけれど、展開について行けない私は、何をどう切り出していいのかわからないまま、ただ二人を見ているしかできない。

だって、瀬尾さんが、私を気に入ってるみたいなそんな言葉、信じられないし。

「花緒さん?夏弥くん、見た目はこんなに格好いいし穏やかそうに見えるけど、だまされちゃだめよ。
結構強気で強引だし、思い込んだら突き進むタイプだから。
逃げるなら早めにね」

「おい、それが邪魔するって事だろ。……あー、やっぱりここに連れてくるんじゃなかった」

大きくため息をついた瀬尾さんは、女将を追いやって、私をじっと見つめた。
これまで見せてくれていた表情よりも、どこか強い表情。
口元にも、何か思惑が感じられて、一瞬瀬尾さんじゃないような気がした。

相変わらず鼓動の音は大きいけれど、それは。
さっきまでの、瀬尾さんへのときめきからの鼓動ではない。
今私の中で暴れている鼓動は、不安からくるもののような気がする。

「あの、瀬尾さん、私は、彼女とかじゃないですよ……。それに、誰にもかっさらわれません。私なんて……」
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