週末の薬指
「好きだよ、花緒。お前だけしか見えなくて、他はどうでもいいって思う俺から逃げないでくれよ。頼むから、俺の側から離れないでくれ」

耳元に吐息とともにささやかれて、体中が反応する。

私の弱い部分をわざと攻めてるのか、耳元から動かない夏弥の唇に意識が集中してしまう。

「花緒が俺を面倒だと思うなら、そう言ってくれ。どうにかして花緒以外にも気持ちを持っていくようにするから。だから、黙って俺から消えないでくれ」

「やだ。……私以外見ないで」

首をそっとずらして、夏弥の必死な顔を見ると、泣いてないのに泣いてるような、余裕のない男がいた。

私を一生懸命に思ってくれるその顔。

私だって夏弥しか見えないのに。

私以外に気持ちを向けないで欲しい。


私の気持ちが伝わったのかどうか、わからないうちに、夏弥はちっと舌打ちをしたかと思うと、あっという間に私を抱き上げて。

「抱かせて」

一言だけ。

そして、明け方まで、今までになく熱い肌を重ねた。

夏弥が私を求めてくれる限り、側にいたいと、何度も何度もその肌に口づけて、伝えた。
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