週末の薬指
そりゃ、すぐに籍を入れようって言ってるけど。まだ家族じゃないし……。

「そんな細かい事。結婚するんでしょ?じゃ、婚約者として呼んじゃえばいいじゃないですか?
で、あの男に仲のいい所を見せつければいいんです。どう見たって夏弥さんの方がいい男なんですから」

まるで悪魔のような笑顔のシュンペー。

その笑顔を見て、思わずひいてしまうけれど、それもそうだな、と私も思ってしまった。

夏弥が来てくれるなら、それだけで気持ちが楽になる。

悠介だって私を傷つけるような言葉を言ってくることもないだろうし。

それに、夏弥に会えるかもと思うだけで気持ちは浮上していく。

「……電話してくる」

そう言った途端、シュンペーが嬉しそうに笑った。

「そんなに焦らなくても、夏弥さんが断るとは思えないんですけどね」

肩をすくめながら呟く声を聞きながら、私は席を立った。

少し離れた休憩室に向かいながら携帯をぎゅっと握りしめて。

『家族』だから来てって言ってもいいものか、照れと緊張とが混ざり合わった感情に戸惑いながらも顔が緩むのは抑えられなかった。
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