週末の薬指
「まあ、いい社長です」

それでも憎めない社長だから、社員みんなついていく。

今日だって、社長が一番張り切っているに違いないし、私が参加したプロジェクトの功績を誰よりも喜んでくれているはず。

小さく笑った私に、ホテルの従業員さんは、

「当ホテルの社長とも大学時代からのご友人だと言う事で、大変親しいようですよ。
……性格も似ているようで、よく喧嘩もされていますけど、二人ご一緒に旅行をされたり。
男同士の友情も羨ましいです」

と、ふふふっと小さく笑った。

うちの社長とAホテルの社長が友人同士だとは聞いていたけれど、本当に仲がいいんだな。

二人とも仕事での成功を得て、家庭だって円満だと聞く。

本当、羨ましい。

「あ、着きました。……こちらです」

エレベーターの扉が開いたのは、25階。目の前に見える大きな扉の向こうには、明るい雰囲気の会場があった。

案内されるままに会場に入ると、既に大勢の人が来ていた。

各々手に飲み物を持ちながら談笑している中にはプロジェクトで一緒に苦労した仲間達いて、少しほっとした。

見知らぬ面々はきっと、社長賞を受賞した社員の家族たちだろう。

小さな子供や奥様らしき人、そして年輩の人まで様々いるけれど、一様に笑顔。

やっぱり社長賞は嬉しいんだろうと思う。

私だって、今日こうしておばあちゃんを連れて来れて嬉しくてたまらない。

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