週末の薬指
* * *
翌朝、というよりもまだ夜明け前の早朝。
「お、重い」
唸るように口にしながら目を覚ました。
下着だけでベッドに入っている自分の姿に驚くけれど、それ以上に重いと感じる今の状況に戸惑った。
そしてすぐに、背後から抑え込まれるように抱きしめられていて、私のお腹の上で交差された手に気付く。
そっと首を後ろに向けてみると、静かな吐息と共に眠っている夏弥がいた。
眠っていても私をぎゅっと抱きしめて、私の首筋に埋められた口元から伝わる体温が、私の体温をも一気に上げる。
夏弥の体全体が私を押しつぶすように抱きしめてくれて嬉しいけれど、とにかく重くて息苦しくて。
呼吸が不規則だ。
それでも、ふと思い出すのは夕べ眠りに入るときに囁かれた言葉だ。
「家族だって。私の新しい家族だって」
夏弥は、これまで嫌いだった言葉を呟いた。
呟いた瞬間、いつもなら心に溢れ出てくるはずの切なさが胸に溢れなくてほっとした。
私に新しい家族ができるなんて、少し前の私なら想像もしなかったけれど、夏弥に出会って、自分がこの世に生まれ出た事が間違いではなかったと思えるようになった。
夏弥が望んでくれるのなら、夏弥の為に生きてみようと、それだけの理由で生きてもいいと思えた。
ただそれだけでも十分幸せだけど、私の父さんが誰であるかもわかって、それどころか身内と呼んでもいい人もできたなんて、夢のようだ。