週末の薬指
何度か瞬きをして、その存在を確かめた。薬指にぴったりとおさまっている指輪は、この前夏弥と選んだエンゲージリングに違いない。

サイズ直しと、内側への刻印の為に日数を要すると言われていたけれどこんなに早く出来上がったんだ。

「これ、いつ……?」

指輪から目が離せないまま夏弥に尋ねると、

「昨日の夕方。本当ならもうしばらくかかるって言われたんだけどな、無理言ったんだ。
早く、花緒は俺のもんだって印をつけたかったからな。ま、そういうこと」

夏弥は少し照れくさそうに、それでいて嬉しそうに教えてくれた。

ベッドサイドのライトをつけて、指を光にかざしてみると、何色にも見えない、ダイヤの個性が輝いていて眩しすぎる。

今まで、いわゆる装飾品と呼ばれるものに対してはそれほどの興味は持たなかったけれど『エンゲージリング』となると訳が違う。

未来を共に幸せに生きる為に努力を重ねていくと、そう誓うためのものであり契約の証。

契約なんて言葉は荒々しすぎて、この輝きにはそぐわないかもしれないけれど、二人で協力して明るい未来を築くための約束だから。

「夏弥を大切にしなきゃって、心から思うよ……」

「ん?ダイヤのお礼で俺を大切にしてくれるのか?」

どこかおかしそうに笑ってる夏弥。

「違うってわかってるでしょ。この指輪は神聖な約束。
お互いがお互いの為に努力して幸せになろうとする約束。なんだか、気持ちが引き締まるね」
< 211 / 226 >

この作品をシェア

pagetop