週末の薬指


曽川隆平。それが美月 梓の結婚相手だと夏弥が教えてくれた。

相変わらずテレビの中ではその話題が熱っぽく語られ、美月 梓の記者会見が今日の夕方行われると何度も伝えられている。

この騒動の内容で、今とりあえずわかっているのは、美月 梓が妊娠したわけじゃないって事だけらしい。

そして、彼女が電撃入籍した相手が『住宅会社の営業マン』ではないかと語られて、思わず夏弥を見上げた。

「ばーか。俺じゃねえよ。それは花緒が一番わかってるだろ」

テレビの前で棒立ちになっている私を背中から抱きしめると、私の肩に顔をのせた。

私のお腹の前で両手を交差させて、二人でテレビを見ながら嬉しそうに笑うと。

「これだけ世の中を騒がせる女よりも、俺は単なるOLだと言われてる花緒を愛してるんだ。
そんな俺が側にいることが、『住宅会社の営業マン』の正体が俺じゃないってわかるだろ?」

「うん……でも、じゃ、誰なの、ずっと噂されてる『住宅会社の営業マン』って。前に、それは俺だって夏弥言ってなかったっけ」

思い返せば、確かに夏弥はそう言っていたような気がする。

美月梓の熱愛の相手だと噂されているのは自分だと、軽く笑っていたような記憶が確かにある。

「自分が相手だって言ってた。彼女の熱愛の相手だって噂されてるのは自分だって、言ってたのにー」

私の手をぎゅっと掴んでいる夏弥の手を振りほどいて後ろにいる夏弥に体を向けると、

「妬くな妬くな。それって無駄な感情だぞ」
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