週末の薬指
「うーん、俺は身代わりになったって事だ。隆平と梓が一緒にいるところをマスコミに撮られてしまったらしくて泣きついてきたんだ、あの日は」

……ますますわからない。

身代わりって一体どういう事なの?面白がるように話す夏弥の様子にもちょっと苛立たしさを感じる。

「俺と隆平って、背格好が似てるのもあって、マスコミは俺が梓の相手だと勘違いしたんだ。
何年か前、CM撮りで一緒にいた時にも俺と噂になってたから、まだ続いてるのかって騒ぎ始めてたらしい」

「え?噂になってたの?」

今回、沖縄にいる時に噂になったのが初めてじゃなかったのか……そうなのか、なんだか、落ち込むかも。

小さくため息をついた私の気持ちを察したのか、少し慌てたように

「あ、噂は噂ってだけで何もなかったし、梓の事務所がそれをもみ消したから表には出なかったんだ」

「うん……で、それで?」

次々と思いがけない事を聞かされて、次第に気持ちが落ち込んでいく。

昔の話だし、結局何もなかった関係だとはいえ、やっぱりあんな綺麗な人と噂になってたんだと思うといい気分じゃない。

「あー、そんなに落ち込むなよ。……で、今回だけど、隆平と一緒に梓のマンションに入る所を写真に撮られてしまって、今回ばかりはもみ消せなかった。梓の人気があまりにも大きくなりすぎて、マスコミにとっては大スクープだから、どうしても公表するって聞かなかったらしいんだ。で、俺の登場」

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