週末の薬指

夏弥と美月梓との関係を聞かされて、どう答えていいのやら、どっと疲れた。

『とにかく梓は隆平と入籍したみたいだし、俺の役目は終了だから。もう彼女が突然現れることもないしマスコミに俺が登場することもない』

あっけらかんと笑う夏弥は、これでわずらわしい話はおしまいだとでもいうように私にキスをした。

いつもなら、私もそれに応えて気持ちを交わすけれど、何がなんだか気持ちがついていかなくて、拒むことはないけれど、ただただ受け身のキスだった。

私の胸中のもやもやに気づいていたのか、夏弥はそんな私の様子に小さく微笑んだだけ。

そして『美月梓と隆平よりも幸せになろうな』と私の耳元に甘い声を落とすことを忘れなかった。

……ずるいなあ。その声だけで、すっかり気持ちが上向きになりそうな予感。

私って簡単な女だったんだな。

『とっくに幸せだよ』

ぽろっと零れ落ちた言葉が私の真意。そして満たされる想いすべてを表す言葉だ。

そんな私の言葉に赤くなった夏弥を見て、さらに幸せな気持ちになる。

さほど若くもない私たちなのに、どうしたものか。

バカップルだと自覚して、さらに気持ちは温かくなる。

なんてばかばかしく幸せな瞬間なんだろう。
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