週末の薬指
車に差し込むお日様の光に照らされて輝く薬指のダイヤが視界に入って、そんな未来を教えてくれる。

すれ違いに満ち溢れた結婚生活が控えていると、言ってるようだ。

住宅会社は週末が勝負だから仕方ないか。

だから。

「私、会社を辞めてもいいからね」

自然とその言葉が出た。今までやりがいを感じながら一生懸命に仕事をしてきたし、社長賞だってもらった。

次のプロジェクトに召集されることも内々に聞かされた。

忙しくなっていくことは明白で、それに伴う夏弥との擦れ違い生活は確実だとわかる。

「やれることはやったって思うから、区切りのいいところで辞めてもいいから。だから、その時は私の事ちゃんと養ってね」

「いいのか?仕事好きなんだろ?」

「好きだけど……夏弥の方が好きだし、大切だから。比べる方がおかしいし。
夏弥にとっての週末が世間での平日だから、私が合わせて一緒に色々行きたいし、楽しみだし」

「なんか……好きの安売りされてる気がするな」

にやにや笑いながら夏弥は嬉しそうに肩を揺らした。

「仕事の事は花緒が決めればいいけど、平日も週末も関係なく、仕事中もプライベートも分けることなく、指輪はつけような。週末に、お揃いの指輪をはめて手をつないで出かけるのが楽しみなんだ」

「……え?」

「二人でマリッジリングをはめて、俺たち夫婦だぞ、でも恋人時代のまま手をつないで出かけるくらいに仲がいいんだぞって見せつけたい」

「……」
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