週末の薬指
瀬尾さんを思い出しながら、その途端に感じる胸の痛みを押しやって、苦笑した。
キスマークはつけられたし抱きしめられた。キスもされたけど、それだけの人だ。
きっと、おばあちゃんとの付き合いの延長で私を気に入ってるんだと思う。特に私だからどうっていう特別な感情はないに違いない。……抱きしめられたときの体温を思い出すと、年甲斐もなくきゅんとするのは気のせいだ。長い間恋人がいなかった私の肌が、勝手にときめいただけにちがいない。
「瀬尾さんは、女の人にもてそうだし、私には太刀打ちできる人じゃないよ、無理無理」
まるで自分に言い聞かせるようにそう呟いて顔を弥生ちゃんに向けた。
すると、何かに驚いて私の背後を凝視する弥生ちゃんがいた。
「弥生ちゃん?」
小さく声をかけると、何かにやりと笑った気がした。そして、
「瀬尾さんて、背が高くて格好いい人?スーツが似合って恋人は何人もいそうな感じ?」
「あ、うん、そんな感じ」
弥生ちゃんの質問の意味がわからないままに、そう答える。恋人が何人もっていう事を認めるのは自分でも切ないけど、実際そんな感じの人だ。あまりにも格好いい人だから、おかしくない。
「ふーん。それなら花緒は渡せないね。次に花緒が付き合う人は誠実で花緒だけを愛してくれる人じゃなきゃね。私が許さない」
「……弥生ちゃん?」
少し厳しい口調になった弥生ちゃんに違和感を覚えた私は、そのまま彼女を見つめていた。
どこか冷たい表情に変わっていく彼女の視線の先は、なぜか私の頭上にあって。
なんだろう。何を見てるんだろう。
ふと振り返った私の視線がとらえたのは。
あからさまに不機嫌な感情を顔に出している……。
「瀬尾さん、どうして……?」
私の座っている椅子の背に軽く手を乗せて、まるで私をにらむような、瀬尾さんがいた
キスマークはつけられたし抱きしめられた。キスもされたけど、それだけの人だ。
きっと、おばあちゃんとの付き合いの延長で私を気に入ってるんだと思う。特に私だからどうっていう特別な感情はないに違いない。……抱きしめられたときの体温を思い出すと、年甲斐もなくきゅんとするのは気のせいだ。長い間恋人がいなかった私の肌が、勝手にときめいただけにちがいない。
「瀬尾さんは、女の人にもてそうだし、私には太刀打ちできる人じゃないよ、無理無理」
まるで自分に言い聞かせるようにそう呟いて顔を弥生ちゃんに向けた。
すると、何かに驚いて私の背後を凝視する弥生ちゃんがいた。
「弥生ちゃん?」
小さく声をかけると、何かにやりと笑った気がした。そして、
「瀬尾さんて、背が高くて格好いい人?スーツが似合って恋人は何人もいそうな感じ?」
「あ、うん、そんな感じ」
弥生ちゃんの質問の意味がわからないままに、そう答える。恋人が何人もっていう事を認めるのは自分でも切ないけど、実際そんな感じの人だ。あまりにも格好いい人だから、おかしくない。
「ふーん。それなら花緒は渡せないね。次に花緒が付き合う人は誠実で花緒だけを愛してくれる人じゃなきゃね。私が許さない」
「……弥生ちゃん?」
少し厳しい口調になった弥生ちゃんに違和感を覚えた私は、そのまま彼女を見つめていた。
どこか冷たい表情に変わっていく彼女の視線の先は、なぜか私の頭上にあって。
なんだろう。何を見てるんだろう。
ふと振り返った私の視線がとらえたのは。
あからさまに不機嫌な感情を顔に出している……。
「瀬尾さん、どうして……?」
私の座っている椅子の背に軽く手を乗せて、まるで私をにらむような、瀬尾さんがいた