週末の薬指
私が帰ってきたと気づいて、玄関まで出てきたおばあちゃんに

『花緒さんと、お付き合いさせていただきます。早いうちの結婚も考えていますので、よろしくお願いします』

あっさりとそう言って頭を下げた夏弥さんには何のこだわりも抵抗もないようで、おばあちゃんにもまっすぐな視線を向けて、その強さは半端なものじゃなかった。

おばあちゃんの横に茫然と立っている私は、強気な夏弥さんに何も言えず、あまりの展開の速さに言葉を失うだけだった。

そんな私の混乱をさらに助長するように

『あら、ようやく気持ちを吐いたのね』

にんまりと笑ったおばあちゃんの声が響いた。

どういう事なのか、何を言ってるのか、二人は何か隠してるんじゃないか。

いろいろなことが頭を回っていくけれど。
あまりに多くの変化が夕べから続いていて、何からどう聞いて、何をどう受け止めればいいのか。

再び過呼吸に陥りそうなくらいに混乱したまま、気付けば仕事に向かう夏弥さんの車を見送っていた。

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