週末の薬指
夏弥さんとおばあちゃんが私の知らない所で何かを共有している事は確かだけど、それすら私の勘に過ぎなくて。

色々な疑問を聞きたいけれど、直接夏弥さんに聞きなさいと言われればそれ以上何も聞けない。

「ねえおばあちゃん。今日、瀬尾さんのマンションに戻ってもいいかな……」

とりあえず。それだけを聞いてみた。夏弥さんに約束させられたっていうのもあるし、私自身もそうしたい。

「戻るもなにも、花緒のしたいようにしなさいよ。おばあちゃんは花緒がしっかりと生きていてくれればそれでいいんだし。何も言わないよ」

「……だよね」

予想通りの答えに少し気が抜けた。

私が自分で決めたのなら、特に反対はしないおばあちゃんだから、夏弥さんのマンションに戻る事も反対はしないと思ってたけど。

こうあっさりと了解されると、少し寂しいかな……。

「夕方戻るのかい?それなら、おばあちゃんが朝から作ってる煮物でも持って行きなさい。瀬尾さん一人暮らしが長いから、ちゃんと食事は考えてあげないと」

あ、まただ。また感じた。

夏弥さんとおばあちゃんが親しく付き合ってるような言葉。この家を建ててから7年ほど、その間ずっと親しくしていたんだろうか。

私が知らなかっただけで、夏弥さんはおばあちゃんとかなりの事を話しているんだろうか。

私の入院も含めて……。

そっとおばあちゃんに視線を向けても、相変わらず私に背を向けたまま。

忙しそうにシンクを片付けている。

何を聞いても答えてくれそうにない。
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