週末の薬指
ずっと一緒に暮らしていたのに、その事にようやく気付いた気がする。

今まで、おばあちゃんの事を知っているようで知らなかった。そんな自分が恥ずかしく感じるし申し訳ない。

「私、明日の晩も瀬尾さんの部屋に泊まってくる。せっかくだから、少しでも長く一緒にいたいし」

少し照れながらも、素直にそう告げると、思いのほか気持ちが軽くなった。

自分が本当に望んでいたことだと実感して、さらに恥ずかしい。

「はいはい。楽しんでおいで。帰る時にはまた連絡しといで。瀬尾さんも一緒なら、彼が好物のチキンライスを作っておくよ」

「……チキンライス……」

まるで私に宣戦布告するようなおばあちゃんの声に、戸惑う私。そんな様子を面白がるような目を向けられて。

「早く私よりも瀬尾さんの事がわかるように頑張りなさい。それが、恋愛の醍醐味だよ」

なんだか、おばあちゃんにいいように遊ばれてる気がするのは考え過ぎだろうか……。
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