君の存在
始まり

今、俺、萩原凌介はビルの上に行くための道を一歩一歩歩いている。
何も考えずに、ひたすら登っていく。
ゆっくり、ゆっくり。

一番上に着いた時に、
「ああ、もう着いちゃったのか」
なんて思ってしまったのは、俺の決心が浅かったからだろう。
でも、そんな自分の気持ちを無視して更に前へと足を進める。
すると、とてもいい景色が目に入った。
行きかう小さな小さな鉄の物体、大きなコンクリート…。
どれもこれも小さくて、なんなのかわからない。
いや、俺は分かろうともしていないかもしれない。
今の俺にはそんなこと関係ないから。
これから、あのわけのわからないものたちのすぐ近くに行くんだ。
その時に見ればいいさ。

ここは、空に一番近い場所。
手を伸ばせば、空がつかめてしまうような…、そんな気がした。
今日の天気は晴天。
実にいい天気だ。
こんな気持ちの日にはもってこいの天気。
雲ひとつなくて、逆に気持ちが悪いけれど、そこがいい。
今の俺にぴったりの天気だ。

いつだったか、ダチの誰かが言っていたことを思い出した。
「宇宙ってな、俺らが思っているよりもずっと大きくて、今も大きくなり続けてるんだってさ。俺らには想像できねえよな~。」
…なんて話。
確かに、俺たち人間はちっぽけだ。





(中断)
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