ゼロの行方
 一行は散らかった室内に入った。簡易なデスクとベッドが置かれているその部屋はそれほど広いものではなく、どうやら退院の部屋の様だった。
「室内をサーチ」
 ジョナサンが傍らのロボットに命じた。
 ロボットは調査装置で部屋の中のサーチを始めた。ジョナサン達も散らばったものをどけて生命反応の源を探した。4
 やがて調査装置はベッドの影でアラームを発した。エレナがそこに駆け寄り、そこにある物をどけると,そこに一人の男が居た。彼もまたからだから出血をしていたが、かろうじて息がある様だった。
「艦長、生存者一名を発見。感染しています」 ジョナサンは『タイタン』に報告した。
「生存者の状態はどうだ?」
 通信機のスピーカーからレナードの声が返ってくる。
「重篤です。早く処置をしないと…」
「わかった。至急シャトルで生存者を『タイタン』に移送してくれ。医務室に防護区画を用意しておく」
「了解しました。直ちに戻ります」
 ジョナサンは生存者近くのロボット二体に目配せをする。命令されたロボット達は協力して生存者を運び始める。
「ダウンロード完了」
 これまでマザーコンピューターのデータをダウンロードしていたルナが言った。
 もはや彼等に『レアⅡ』で行えることはなかった。   
 それを確認したかの様にマザーコンピュータの内部で一つのメッセージが走った。
(『ZERO計画』第一段階終了。第二段階へ移行)
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