ゼロの行方
 ブリッジ…。
 レイカの叫び声が響き、そこにいた全員が一瞬動作を止めた。誰もが施行の止まるのを感じた。ほんの僅かな間、音が消えた。
 そこにいる全員の視線がレナードの集まる。
「コンピューター、医療室を中心として周囲一ブロックの乗員を退避、待機完了後直ちに各ブロックを閉鎖、」
「了解、退避命令を発動します」
 コンピューターの乾いた声が返ってくる。 数分後、ブリッジの壁に描かれた『タイタン』の見取り図の一部が赤く転倒した。閉鎖が完了した証だった。
「ドクター、一体どういうことだ?」
 コムリンクに向かってレナードが問いかけた。レイカは隔離区画の壁面で発見した小さな穴のことを報告し、『レアⅡ』で起こったパンデミックの始まり方を説明した。
 最初の感染者は隔離区画の外にいた医療部員だった。彼等は隔離区画の外にいたため、防護服などは着ていなかった。そこをウィルスの居攻撃されたのだ。
「だが、ウィルスは細胞とは違い、生物ではないとされているが、防護壁に穴を空けることなど出来ないのではないか?」
 ジョナサンがドクターに問いかける。
「確かにそうよ。ウィルスは細胞の中に入らないと活動(増殖)は出来ない。物質を変化させるなどは細菌のすることだわ」
 レイカは拭いきれない疑問が大きくなるのを感じていた。
「何かまだ私達が気づいて着ないことがあるわ。今、防護壁に穴が空く課程を分析しているから、そこから何か解るはずよ」
 それがレイカの声を聞く最後となった。
 ブリッジの中にコンピューターの冷たい声が響いた。
「医療室との回線が断たれました。原因は不明です」
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