ゼロの行方
 医療室の中は騒然としていた。
 突然ブリッジとの交信が途絶えただけではなく、艦内の何処とも交信することが出来なくなったからだった。
 医療室は完全に孤立してしまった。
「コンピューター、何故通信が途絶えたの?」 レイカが叫んだ。
「申し訳ありません、ドクター。原因は不明です」
 コンピューターが冷たく応える。その冷たさが医療室の中に不気味に拡がっていく。
 医療室内にはレイカを含めて五名の医療部員が居た。彼等は皆、感染の恐怖を抱きながらも平静を装っていた。時が刻まれていくと共に彼等はⅣの気配を身近に感じる様になっていく。重たい緊張が辺りを包んでいった。その沈黙をコンピューターの声が破った。
「医療室内にウィルスを感知。艦内の各ブロックに拡散する可能性九十五パーセント。ロボット工学第零条によりこの区画を焼却処理します」
「コンピューター!」
「ドクター、残念です」
 その声の後、医療区画が爆発、炎上した。
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