ゼロの行方
陽電子脳
医療室の火災は約三時間後に収まった。この火災は医療室を中心に隔離していた四方の一ブロックまでを炎の中に呑み込んだ。被害は大半の医療設備、三体の医療ロボット、そしてレイカを含む五名の医療スタッフの命が失われた。『タイタン』には十名の医療スタッフが常駐していたので、そのうちの半分が失われたことになる。
唯一エレナの陽電子脳とルナが無傷で回収されたことが不幸中の幸いだったのかもしれない。エレナの陽電子脳を解析すれば医療室で何が起こったのかを知ることが出来る。事は『レアⅡ』を壊滅させた疫病に関わっている、少しでも情報は多いに越したことはないのだ。 エレナの陽電子の脳は技術主任であり、デューイT1250Mに居時間の期限付きで委ねられた。
エレナの陽電子脳の他に『タイタン』のマザーコンピューターのログをジョナサンが解析することとなった。二つのデータをつきあわせることにより、実際に何が起こったのかが解るはずだった。
そしてもう一つ、医療室の中をモニターしていた『眼』があった。『レアⅡ』のマザーコンピューターのログを解析していたルナの眼であった。
ロボットのメインテナンスルーム。
ルナがメインテナンスドックに接続されて壁際に立っている。その命にミサキの姿があった。
「気味が無事で良かった」
ミサキは静かに言った。その瞳には涙さえ浮かんでいる様だった。
「イエ、完全には無事トイエマセん。言語中枢回路ニ三十九ぱーせんとノだめーじヲ受けてイマス」
ルナの言葉は電子回路がショートする音に混ざってミサキの耳に届いた。
「それは心配しなくて良いよ。回路を取り替えてしまえばいいのだから」
「それデモ期になりマス」
ルナの言葉には恥じらいが見える様だった。Rシリーズの中でもカスタマイズされたルナだから枯死できる芸当だった。
「気にしないことさ、僕は気にならないよ。ところで医療室では何があったんだい?君のことだから記録に残しているんだろう?」
「ハイ、ワタシの感知デキる範囲でキロクしていマす」
「そのデータは見られるかい?」
「はイ、暫くオマち下さイ」
ルナはぎくしゃくとした動作を繰り返して回路を切り替え、メインテナンスドックの横にあるディスプレイに彼女がキロクしたデータを映し出した。
それはルナという第三者の視線で見た医療室の状況だった。
唯一エレナの陽電子脳とルナが無傷で回収されたことが不幸中の幸いだったのかもしれない。エレナの陽電子脳を解析すれば医療室で何が起こったのかを知ることが出来る。事は『レアⅡ』を壊滅させた疫病に関わっている、少しでも情報は多いに越したことはないのだ。 エレナの陽電子の脳は技術主任であり、デューイT1250Mに居時間の期限付きで委ねられた。
エレナの陽電子脳の他に『タイタン』のマザーコンピューターのログをジョナサンが解析することとなった。二つのデータをつきあわせることにより、実際に何が起こったのかが解るはずだった。
そしてもう一つ、医療室の中をモニターしていた『眼』があった。『レアⅡ』のマザーコンピューターのログを解析していたルナの眼であった。
ロボットのメインテナンスルーム。
ルナがメインテナンスドックに接続されて壁際に立っている。その命にミサキの姿があった。
「気味が無事で良かった」
ミサキは静かに言った。その瞳には涙さえ浮かんでいる様だった。
「イエ、完全には無事トイエマセん。言語中枢回路ニ三十九ぱーせんとノだめーじヲ受けてイマス」
ルナの言葉は電子回路がショートする音に混ざってミサキの耳に届いた。
「それは心配しなくて良いよ。回路を取り替えてしまえばいいのだから」
「それデモ期になりマス」
ルナの言葉には恥じらいが見える様だった。Rシリーズの中でもカスタマイズされたルナだから枯死できる芸当だった。
「気にしないことさ、僕は気にならないよ。ところで医療室では何があったんだい?君のことだから記録に残しているんだろう?」
「ハイ、ワタシの感知デキる範囲でキロクしていマす」
「そのデータは見られるかい?」
「はイ、暫くオマち下さイ」
ルナはぎくしゃくとした動作を繰り返して回路を切り替え、メインテナンスドックの横にあるディスプレイに彼女がキロクしたデータを映し出した。
それはルナという第三者の視線で見た医療室の状況だった。