ゼロの行方
 直ぐさまレナードが指示を出した。これまで前方の宇宙空間を映していたスクリーンが前衛基地『レアⅡ』の司令室内に切り替わった。雑音と激しく乱れる映像の中、『レアⅡ』の責任者らしき人物が現れた。
「こちらは前衛基地『レアⅡ』の司令官レベッカL2ー652F、連邦標準時間にして三日前に未知の感染症が発生。八十名の隊員のうち六割が既に死亡、残り十二名のうち八名が重篤な状況にある。至急医療班の派遣を斯う。繰り返す、こちらは前衛基地『レアⅡ』…」
 ノイズの中、繰り返される『レアⅡ』の司令官の声が繰り返される。
「このメッセージは十日前に発信されたようです」
 ジョナサンが俯いたまま首を振った。
「スクリーンを切ってくれ」
 レナードの低い声が静まり返ったブリッジに吸い込まれていく。彼の目は副長に注がれている。
「このメッセージ通りの感染症だとすると既に十日が過ぎていることですから絶望的ではないかと…」
 艦長からの気配に応えるように副長は言った。
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