ゼロの行方
『タイタン』は土星周回軌道上に停止している。スペースドックに向かうか、この救難信号に応えるか、その判断を乗員達は待っているのだ。
「この付近に他の艦船は?」
「ありません、本艦が最も近い距離にいます」 レーダー担当のマッコイT1ー193Mが画面を見つめて応えた。
 一瞬、ブリッジが沈黙に包まれた。誰もが同じ答えを持っていたが、指揮官の命令を待っていた。
「ジョナサン、至急医療班を編成しシャトルで『レアⅡ』とランデブーするよう準備してくれ。諸君、これより本艦は『レアⅡ』の救出に向かう。ミサキ、最大船速だ」
 艦長に指揮の下、乗員の全てが己のすべきことについた。
 これが全てのはじまりだった。
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