ゼロの行方
『レアⅡ』の内部は暗かった。
 隊員の多くが罹患してしまい基地の保守、管理の出来る物も居なくなってしまったため、基地のマザーコンピューターが最低限のエネルギーで維持しているためだった。
「ルナ、マザーコンピューターにアクセスしてここ一ヵ月間のログをダウンロードしてくれ」
 防護服のヘルメットの中からジョナサンが指示した。
「了解、ダウンロードに三〇分ほどかかります」
 ルナは無線状態でマザーコンピューターにアクセス試みた。ルナはマルチタスクを実行できる数少ないRシリーズのロボットだった。ある一つの作業をしていても本来の医療作業を行うことが可能だった。ジョナサンはこの理由からルナを今回の医療班に組み入れたのだ。
「では医療室から見てこう」
 すかさず傍に居たRU2406F型、通称エレナが基地内の見取り図を示した。それによると医療室は第Cデッキの反対側の地下二階にあった。 一行はジョナサンを中心とした円陣を組んで進んでいく。三原則第一条に則った行動だった。それでもロボット達は武器と呼べる物は搭載していない。第一条がそれを許さないからだ。
 基地内の通路は静寂に包まれていた。微かに動くものさえ見当たらなかった。五分ほど歩いた所で基地内を貫いているメインシャフトに辿り着いた 
 シャフトの表示板を見るとこの基地は地上三階、地下二階の構造をしていた。そしてシャフトは彼等の居るフロアで停止していた。彼等は迷わずドアを開きシャフトで降下を始めた。
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