キミの視線

部活終わり。

忘れ物に気づき、息を切らし教室に駆け込むと、

「あ」

誰もいない教室の窓際のあの席に人影。

その瞬間。の胸は大きく跳ねあがった。


「あ、あの、萱島君?」


恐る恐る近付くと、彼は瞳を閉じていて、その姿に私は思わず息を呑んだ。


どうしよう…今なら…

少し躊躇いながらも、私の指先はその長い指へとのびていき―――
そっと撫でるように、指を滑らせた。


その瞬間。


ふいに、彼の手が私の指を捕らえた。


「何?」


「え、あ、あの、ゴミがついてたから…!」


「嘘。俺が気付かないとでも思ってた?」


萱島君は、立ち上がると同時に、私を引寄せ、耳元に唇を近付ける。


「倉田の視線」


途端に顔が熱くなって、俯く私の顎を強引に上げると、彼の瞳が私を捕らえた。


「もう、あんたの視線から逃げないから」


そう言って、頬に触れる長い指先の感触に、私は思わずキュッと瞼を閉じた。



――――‐外見るのも、もう飽きたしな





[完]

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