なみだ涙ナミダ
走る人は見るからに男性、持つ荷物は女性物のカバン。
それから推測するに後ろの方に息をあげているオバサンが、そのカバンの持ち物なのだろう。
はぁ、とため息をつきベンチから立ち上がった。
「メグ姉アイス持とうか?」
春菜が気配りをしてくれたが私は首を横に振った。
「すぐ終わるから大丈夫!」
分かった、と一言。またアイスを食べることに春菜は夢中だ。
私は男性と息を合わせるべく、男性一点に意識を集中させた。
私の前を通過する一歩前で私は前に足を突き出し、それに引っかかった男性はバランスを崩し前に体が斜めった。
そこですかさず、男性の腹目掛けて下から上に足を振り上げ、上に上がった男性にかかと落としを決めた。
体が痛くて動けないだろうが、いちよう気を失ってることを確認し男性からカバンを奪った。
「これ、あなたの?」
さっきのオバサンにカバンを差し出した。
「あぁ、ありがとうございます。なんとお礼を言ったら言いのやら...」
「お礼なんて入りません。帰りは気をつけて下さいね」
そう言ってアイスをパクリ。と同時に後ろに振り返った。
振り返った瞬間、何かを横目で見てしまった。
「たか...すぎ?」