なみだ涙ナミダ




***

「そういえば今日、姫様女子と一緒に楽しそうにしてたな」

マサヤが思い出したかのように言い出した。

俺はお湯に少しずつ体を浸からせながらそうだな、と返す。

「なんだよ、それだけ?姫様が懐くのは俺だけ!みたいなものはないのか」

そこまで、束縛心ありません。と言い返したいところだが、今日は長旅で疲れてそれどころじゃなかった。


そういえば、今日一回も高杉と話してないな。

あんなバカみたいな言い合いでもないと悲しいもんだな。
最近、学校では会うたびケンカをするのが普通になっていた。

だからか。


頭の中は、高杉だらけ。


「そろそろ出ようぜ」

マサヤの言葉に頷き、俺らは露天風呂を後にした。

ガララ、と戸を開けて、少し左には自販機。その後ろに誰かの足が見えた。

そして、その周りには男が群がっていた。

「どーしたん?」

そういいながら男共をすり抜けると、予想外の人がベンチに座りあろうことか、寝息をたて寝ていた。

「あぁ、純か。なぁ、こんな赤メガネの可愛い子うちの学校いたっけ?」


いるも何も、君らも知ってる我儘姫様ですが!

やはり、メガネをかけると別人に見えるらしい。

「おい、高杉。起きろ」

そう言いながら高杉の肩を揺さぶる。

後ろで「えっ!?あの我儘姫様かよっ」と驚愕の声がする。

俺は気にせず肩を揺さぶる。



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