なみだ涙ナミダ
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「そういえば今日、姫様女子と一緒に楽しそうにしてたな」
マサヤが思い出したかのように言い出した。
俺はお湯に少しずつ体を浸からせながらそうだな、と返す。
「なんだよ、それだけ?姫様が懐くのは俺だけ!みたいなものはないのか」
そこまで、束縛心ありません。と言い返したいところだが、今日は長旅で疲れてそれどころじゃなかった。
そういえば、今日一回も高杉と話してないな。
あんなバカみたいな言い合いでもないと悲しいもんだな。
最近、学校では会うたびケンカをするのが普通になっていた。
だからか。
頭の中は、高杉だらけ。
「そろそろ出ようぜ」
マサヤの言葉に頷き、俺らは露天風呂を後にした。
ガララ、と戸を開けて、少し左には自販機。その後ろに誰かの足が見えた。
そして、その周りには男が群がっていた。
「どーしたん?」
そういいながら男共をすり抜けると、予想外の人がベンチに座りあろうことか、寝息をたて寝ていた。
「あぁ、純か。なぁ、こんな赤メガネの可愛い子うちの学校いたっけ?」
いるも何も、君らも知ってる我儘姫様ですが!
やはり、メガネをかけると別人に見えるらしい。
「おい、高杉。起きろ」
そう言いながら高杉の肩を揺さぶる。
後ろで「えっ!?あの我儘姫様かよっ」と驚愕の声がする。
俺は気にせず肩を揺さぶる。