二人の距離。



…そして、あたしの方を見て笑った――気がした。

え、な、何…?

橘くんとは中学の頃、全く関わりがなかった。

なのに、何であたしを知っていて…何であたしに構うんだろう。

そんな疑問でいっぱいだった。


「憧れの人と、同じ学校に入るためです。まあ、その人が落ちてたら洒落になりませんが。」


どっと体育館に笑いが起こる。

こんな風に、冗談も言える人なんだ…。

中学が一緒だったって言っても、橘くんは人気者で雲の上の人のような存在な訳で知らないことだらけだった。


「これ以上は、秘密です。憧れの人がバレてしまうので。すいません。
以上、新入生代表、橘陽介。」


彼がまた律儀に頭を下げると同時に、拍手で体育館は包まれた。

あたしも、半分呆然としながら拍手をした。



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