二人の距離。



それが可笑しくて、美佐と顔を見合わせて笑うと近くに立っている生活指導の先生らしき人がギロリとこちらを睨んだ。

それに橘くんも気づいて、焦ったように前に向き直した。


「……ふっ…。」


もう、抑え切れずに笑い声が出てしまった。


「ちょっと…笑わせな……あは…っ!!」


美佐もつられて笑う。

そして、とうとう怖そうな生活指導の先生があたし達に来てげんこつを落とした。


「ったく、一年なんだからもっと緊張感を持て。」

「…はい。」

「……すいません。」


揃って先生にお詫びすると、よろしいと頷き二、三年生が座る後ろの方へと去っていった。


「…はぁ、もう初日から怒られてげんこつだよ〜?紗枝が笑わすから…。」

「本当だよ…。でも、笑ったのはあたしのせいじゃないし…。」


まだ、じんじん痛む頭を軽く摩る。

すると、美佐は「あ、終わる」と呟いて喋らなくなった。

入学式は、本当にもう司会の人が締めくくって終わりという所であたしも黙って終わりを待った。



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