二人の距離。



「ちょっと、何それ。めっちゃ紗枝に失礼なんだけど。」


美佐の隣にいた加奈子ちゃんが、その子のことを睨む。

ありがとう、と加奈子ちゃんを見るといいからいいからというように微笑む。


「そういうことは直接、本人に聞いたらどう?」


さらに、美佐が冷たく笑いながら言い放った。

その子はきつく唇を噛んで、一緒にいた子と教室を出て行った。


「はぁ〜っ、何あれ。ああいうの嫌い!!紗枝も何か言えばよかったのに〜。」

「あんな状況じゃ、言えないでしょ。それより私は、橘が好かん。」

「うん、何かうちも嫌になってきた〜。
…ん?好かんってオッサンじゃーん!!それに腕組んでるし!!キモ〜い!!」


大袈裟に加奈子ちゃんは身震いをして、あたしに抱きつく。


「オッサンって何よ〜、キモいって何よ〜!!」


加奈子ちゃんに美佐が飛びかかろうとすると、加奈子ちゃんは大声で笑いながら教室を逃げ回る。

あたしはいつの間に、加奈子ちゃんも「紗枝」と呼んでくれていたことが嬉しく思いながらその光景を見て笑っていた。



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