二人の距離。
「こーやって…俺、近づいてるのに何で大丈夫なの?滝沢はダメ、なんでしょ?」
「滝沢って、橘くんの前の席の人のこと…?」
「そう。
…ねぇ、何で?」
さらに、橘くんの顔が近づいてきて吐息がかかる。
「わっ、かんないから…お願い、離れて…。」
声にならない言葉で、橘くんに懸命に伝える。
…ドキドキしてるのが、バレないように。
「ふふっ…何その顔。堪んないんだけど、どうしたらいい?」
「…い、意味が分からない。」
「しょうがないなぁ…。」
やっと橘くんが離れて肩の力が抜けてから、こんなに力を入れてたことにびっくりした。
「じゃあ、その答えは今度聞かせて?
…あ、先生にはちゃんと言っといたしもうすぐ終わるから、増田さんと相沢さん来ると思うよ。
お大事にね。」
いつの間にか保健室のドアにいた橘くんは、あたしに少し微笑んでからドアを静かに閉めて教室へと戻っていった。