二人の距離。
「ない、と…思います。」
「…そう、じゃあ私の勘違いね。」
先生は、フッと笑って視線を外し細い手首にかかっている腕時計を見た。
「あら、もうこんな時間じゃない。早く帰らないと、山本先生に怒られるわよ?」
「山本先生って誰ですかー?」
「生活指導の先生よ。怒ると、怖いから気をつけてね。」
生活指導って…入学式で、あたしと美佐が怒られた先生じゃ…。
確かに、あの感じは生活指導っぽいかも…。
「え〜、怒られたくないから早く帰ろ!!」
「うん、帰ろうか。」
「ふふっ、素直な子達ね。気をつけて帰るのよ?さようなら。」
「「「さようなら〜。」」」
三人、声を揃えて保健室から出た。
…先生が、何と呟いたのか知らずに。
「陽介…あの子でしょう?」