通学電車~うさぎ~
推理小説を読み始めて、5分くらいしたころ、小説の探偵が事件の真相を暴いている大事なシーンに入ったときーー
「あ、の~……」
明らかに遠慮がちに、俺の前で声を出した女がいた。
ったくーーー
大事なシーンだってのに、なんだよ……
そう思いながら、俺は小説から声をかけた女子へと視線を移した。
ーーーーーー……!
なんとなく、だけど。
ホントになんとなく。
俺は、コイツに動かされそう、そう直感した。
別に、可愛いから。とかじゃない。
いや、可愛いが…それだけじゃなくて、俺には持ってない何かを
コイツは教えてくれそうだ…
ーーーーそう、思ったんだ。
「えっと、あの~…?」
ハッ…!
トリップしすぎてたか…
女はこちらを見て頭にはてなマークを浮かべている。
「あっ…な、なに?」
あ~、明らかに噛んだよな…俺。
「すみません…その、貴方の脚のところに定期落としたんで…拾って貰えますか?」
定期…?
あ、このうさぎの入れモンのヤツか…?
「コレ?」
そう問いかけると、首をブンブン振る目の前の女。
「ありがとうございます!!」
差し出すと、礼だけ言って、どこかへ去っていった。
あ、名前…聞き忘れた。
また、会えんのかな……?
会えると、いいな。
これが、うさぎとの出会い。
そして、今、うさぎと再び出逢えて、話せるようになって。
恋人になった。
離さないよ。うさぎ。
俺、付き合ったことねぇし、恋なんてしたことなかった。
だから、つまんねぇかもだけどさ…