黒竜と魔法使い。~それは、恋に落ちる瞬間~
測りかねているうちに、シルヴィアが瓶を抱えてやってきた。
ワインボトルほどの瓶には、桃色の液体が入っている。
「やけどの範囲がわからないので、全部持ってきました。こちらは魔法陣を描いた紙です。魔法薬なので魔法陣を使って効果の範囲を広げてください、えっと…」
紙と瓶をベルデウィウスに押し付けて、その瞳を見つめて、
「…魔法使い、ですよね?魔法陣の展開は大丈夫ですか?駄目なら、私も一緒に行きますが…」
問いかける。
ここで、違うと言ったらどうなるのか。
そう思いつつも、紙の内容を見て、その魔法陣の完成度に目を見張る。
どうやら薬だけではなく、数式にも強いらしい。
「…大丈夫だ。この紙に描かれた魔法陣を見て、確かに『完成度』は高いようだな」
「もちろん、魔法研究者《ディーン》ですから」
微笑むシルヴィアに、ベルデウィウスは薬の礼を告げる。
キョトンとするシルヴィアは、くすくすと笑いだす。
「?」
「お礼はお友達の傷が癒えてからでお願いします。助からなかったら、どうぞ、怨んでください」
冗談を言うように、それでも、―――、
「私の魔法薬は完璧です」
自信を持って、ベルデウィウスに告げた。