黒竜と魔法使い。~それは、恋に落ちる瞬間~

穏やかに眠る少女のその身を抱え、



「軽いな…」



そっと呟く。すると少女が身じろぎし、
「ん…ぅ」
ゆっくりとまぶたを開ける。
「………?」
数度瞬きを繰り返し、
「?、?!」
ぎょっと身を起こした。
「!? ま、まて!!」
突然、飛び起きたシルヴィアに驚き抱えていた腕が緩む。さらにバランスを崩し、二人は絡み合いながら倒れた。
「……たた」
「ぅ…」
痛みで声を上げたシルヴィアと、シルヴィアに押しつぶされるようになったベルデウィウスは、はっと視線を交わらせた。



「ご、ごめんなさい!?」
ベルデウィウスから飛び降り、ベルデウィウスは身を越した。
「いや、大丈夫だ」
「でも、つぶしちゃった…」
頬を押さえて、どうしよう~と慌てる彼女に苦笑いをこぼす。
「そんなことより、なぜこんなところで倒れていたんだ?」
「え?」
ベルデウィウスの問いかけに、シルヴィアが数度瞬きを繰り返し、
「倒れていないわ。寝ていたのよ!」
とにっこりとほほ笑んだ。
「………」
どうやら、本気でそう思っているらしい。
この話題では長く話が続きそうにない。
そう思いながら、ふと、『長く話が続きそうにない』と感じたい己に驚いた。
ベルデウィウスは、シルヴィアと会話がしたいと――そう思ったのだ。
相手が、魔法研究者《ディーン》であるというのに、だ。



「その様子なら、魔法薬は効果の100倍はあったのね」
嬉しそうに声を上げシリヴィアの喜びように、釈然としない。
「嬉しいか?」
「もちろん!!嬉しい!だって、私の構想が正しいことがはっきりしたもの!私の完全で完璧な魔法薬のね!」
さらに釈然としない。
―――いや、面白くない。
そう感じた。
だから、



 「誰が、魔法薬が効いたと言った」


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