【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
…優しくなった、ねぇ…。
「なんか、その言い方だと昔の俺は相当なワルだったって感じだな」
『おー、極悪人だ』
「いや、さすがにそれは言い過ぎじゃね?」
『いやいや、“泣く子も黙る笠井 龍輝”がお前のキャッチコピーだから』
なんじゃそりゃ。
つーか、哲はすげー泣いてるけどな。
あぁでも、沢良木 涼太は俺のこと怖がってたなぁ。
「なぁ健吾。 真由の元カレの話、大雅とかに聞いた?」
『おー、沢良木先輩の親戚っつーアレだろ?』
「うん、その沢良木って男はすげー俺のこと怖がってた。
二人で話した時さぁ、“俺を殺しに来たんですか”って言われたもん」
『あはは、龍輝は喧嘩負け無しのおっかねーオッサンだからなぁ』
「オッサン言うな。つーか健吾の方がオッサン顔じゃね?」
『俺はワイルドでダンディーなハンサムだぞ』
「つまりはオッサンだな」
またけらけらと笑う俺たち。
そんな感じでずっと話を続け、1時間半が経った頃にようやく電話を切った。
切る直前、『お互い花火大会を楽しもう』と言った健吾。
ジンクスを試す気は無いらしいけど、それでも優と過ごす初めての花火大会だから、やっぱり楽しみなんだろうな。
…俺も、真由と過ごす初めての花火大会なんだ。
サプライズという形を喜んでくれるかはわからないけれど、それでも、二人で過ごす初めての花火大会に変わりはない。
「お互い、楽しめるといいな」
既に電話は切った後だったけど、それでも健吾に言うように言葉を出す。
「頑張ろうな、お互いに」
小さな小さな笑みを浮かべ、携帯をパタンと閉じた。
……。
そしてその数日後。
携帯の電源を切った状態で、花火大会の日を迎えた。