【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐


「俺もずっと試してたけど繋がらない。
一度だけ大雅にメール送れたけど、多分センターで止まってるから気付いてない」

「マジかよ。 予想外すぎんだけど」


「予定通りならもう二人は着いてるから、行くしかないね」

「…だな」


髪をかき上げ、ふぅっと息を吐く。


「朔也は、ずっとここに居る?」

「うん。先に帰りの乗車券買っとく」


「あー、その方がいいかも。
帰るって時に券買ってたら、それだけで何分も足止めされちまうもんな」

「うん。 健吾と優ちゃんは多分今日はずっと二人で居ると思うから、4枚買う」


「わかった、頼む」

「うん」


重たいカバンの紐を肩から下げ、朔也は笑う。




「頑張れよ、龍輝」


優しく、そしてどこか切ない顔。
朔也はそのままクルッと向きを変え、券売機の方へ歩き出した。


「…朔也」


名前を呼んでもアイツは振り返らなかった。
俺の声自体、届いていないのかもしれないけれど。

…だけどそれでも、アイツを見ながら言う。




「色々、ありがとう」






…その直後、

朔也は立ち止まり、僅かに俺を見た。




「別に何もしてないよ」




そう言いながらもその顔は笑っていて、とても温かかった。


「ここに居るから、ちゃんと真由を連れてこい」

「…あぁ、わかった」


微笑みを浮かべて手を振る朔也に、俺も笑顔で応え、約束の場所へと歩き出した。

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