【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐


……。


人混みを抜け、予定していた場所へ…行ったはいいけれど。




「…居ねーし」




…大雅と真由の姿は無く、代わりに大量のカップルが肩を寄せ合って花火の打ち上げを待っている。


「なんで居ないんだよ」


そうボヤいても、それに答えてくれる人は居ない。

時間は、17時48分。
もうすぐ始まっちまう。

予定では、もうとっくに真由に会って、二人で花火を見るために空を見上げているのに。


「…大雅、どこ行った?」


場所を移動しながら、二人を探す。

…けれど、こんなに大量の人の中からアイツらを探すなんて、そんなの不可能だ。

不可能にならない為に会う場所を決めていたのに、そこに居ないんだから、もう無理だ。


「…あの馬鹿、何やってんだよ」


焦りとイライラ。 そして、諦め。

…楽しそうに笑い合うたくさんの人たちの中で、俺だけがただ、下を向いてため息をついていた。




……そして、花火の第一陣が打ち上げられる。

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