【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
「あ、もしかして大雅に嵌められた?
アイツ、女と見りゃあ見境無いからなぁ。
まさか龍輝の女を奪うとは思わなかったけど、やっちまったかー」
「ちょ、え、お前大雅と会ったの!?」
「会ったっつーか、通りの向こうに居たのを見かけただけ。
え、何、もしかして修羅場? “四聖獣”崩壊?
つまり…、俺が“四聖獣”に入れるチャンスあり?」
「んなもんどうでもいいから。 どっち行ったか詳しく教えて」
「うわ、どうでもいいとか言うなよー。
俺にとったらかなり重要だぞ?」
「…“山ちゃん”。
今すぐ言わないと、そこにぶら下がってる大事なモンが使い物にならなくなるぞ?」
「ごめんなさい許してください。
大雅たちはあっちです。あの店のもうちょい向こうに座りました」
ビシッと背筋を伸ばし、クレープ屋の方を指差す山田。
それを見てにっこりと笑い、肩に腕を回す。
「助かったよ山田。
お前のおかげで、色々上手く行く」
「…え、殴りに行くんじゃねーの?」
「いや、上手く行くんだ。ほんと、ありがとう。
詳しいことはあとで大雅にでも聞け。 じゃあな」
「お、おう…」
不思議そうな顔で首を傾げる山田を残し、大雅たちが居るだろう場所へと歩き出す。
「…山田!!」
ドォン!! と強烈な音が響く中、山田の方を見て声をかける。
「もし大雅と真由が居なかったら、お前のこと殴りに行くから!!」
ニッコニコで言うけれど、俺の声が聞こえていないのか、山田はやっぱり首を傾げている。
そんな山田に最後まで笑顔を見せ、大雅たちが居るであろう場所へ向かい、再び歩き始めた。